Logic

あけましておめでとうございます。今日はわたしのお気に入りのラッパーであるLogicについて書いています。この文章を読んだ方がLogicの作品をもっと楽しめるようにということを考えて、4つのポイントを挙げています。

 

①Logicの生い立ち

Logicはその見た目から白人で育ちが良いと思われがちだが、実際は白人の母と黒人の父を持っているため、ドレイクやJ.Coleと同じ境遇である。Logicの父親はほとんど家を留守にしていたし、白人の母親は人種差別主義者であった。彼は子どものころ母親からニガーと呼ばれて育ったのだ。また、彼の両親は薬物中毒であり、兄はドラッグの売人で、自分の父親にまでドラッグを売っていた。そんななか食費補助や生活保護を受けて暮らしていたLogicは、周囲の粗悪な環境に染まらない"Good Kid"であった、という点でケンドリック・ラマーと比較されることが多いように思われる。

 

②VMG(Visionary Music Group)とデフ・ジャム

Logicは2013年にXXL Freshmanに選出され、デフ・ジャムとの契約を果たして注目を受けたため、Logicといえばデフ・ジャム!というイメージが強いかもしれない。しかし2010年にリリースされたLogicの最初のミックステープ”Young,Broke,and Infamous”がインディーレーベルVMGの代表であるChris Zarouの目にとまり、彼は2011年にVMGと正式に契約を結んでいる。(Logicの楽曲をSoundCloudで聴いたことがある人は目にしたことがあると思うが、彼の楽曲はTeamVisionaryというアカウントからポストされている。)彼はすぐにVMGを活動の拠点とし、ツアーのブッキングやMVの撮影、トラックのプロデュースなどを進めて、ミックステープも続けてリリースした。ここで注目すべきは、Logicのメジャー/インディー・レーベルとの付き合い方だ。誰もが知るメジャーレーベル、デフ・ジャムと契約した後も彼は決してその場所によりかかることをせず、VMGとの関係性を維持している。デフ・ジャムとの契約はあくまで自分を広く売り出すための商業的な目的が主であり、楽曲制作は今までのままVMGを中心に行うというところが、まさにlogicalな選択だ。

③ラップスキルの高さ

フリースタイルがむちゃくちゃカッコイイのでみてほしい。得意のルービックキューブをしながらフリースタイルを披露するLogic。

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ラップをするのが楽しくてしょうがないんだろうなと思う。Logicのラップは聴いていて本当に気持ち良い。

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どんなビートにも柔軟に対応できるラップスキルの高さと、多彩なフロウ、速射砲ラップ。リリックからも分かるように、そういった自分の技術を自覚しながら自信満々にラップするのが堪らない。

 

④どこまでもナード

Logicの作品には様々な方面へのオマージュが溢れている。1stアルバム、2ndアルバムに共通して登場するナレーション役のTaliaはA Tribe Called Questの『Midnight Marauders』に対するオマージュであるし、90年代のヒップホップからの多大な影響が読み取れて面白い。ここではそんな彼の映画監督タランティーノに対するオマージュを紹介する。彼はもともと自分で映画のシナリオをかいたりしていたほど映画好きである。その映画好きは彼の2ndアルバム『The Incredible True Story』に最もよく表れていると思う。1stアルバムが自分の生い立ちと密接に関わった、自伝的な要素が強いダークなものであったのに対し、本作はLogicが自分自身でかいたSF的な構想のコンセプトアルバムであり、全体的にハッピ―なイメージの作品だ。Quentin Thomasという登場人物の名前はタランティーノに由来するものであるし、リリックにおいてもタランティーノが登場する。アルバムの最後のトラックである"The Incredible True Story"の最後の部分で黒人のKaiと白人のThomas(この設定がLogicの生い立ちの由来しているという点も面白い)がLogicの好きなタランティーノの映画についての議論を繰り広げるので、タランティーノ好きな方はぜひチェックを。1stアルバムに収録されているこの楽曲も面白い。

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以上です!Logicの楽曲をより楽しめるきっかけとなったら良いなあと思います。最後にオススメのトラックをいくつか貼ります。

①Tic Tac Toe

ミックステープ『Young Sinatra;Undeniable』収録。2015年大ブレイクしたThe Weekndの2011年リリースのミックステープ『Echos Of Silence』の"D.D."がサンプリングされているのに気づいて個人的に盛り上がったので。間奏のトコです。

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②Nasty

ミックステープ『Young Sinatra;Welcome To Forever』収録。VMGとデフ・ジャムの名前が出てきます。リリックもMVも自信満々で良い。

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③Gang Related

1stアルバムに収録されているこの楽曲では、[Verse 1]ではLogic目線で兄のことがラップされ、[Verse 2]では兄の目線でラップが展開される。その視点の変化が興味深い楽曲である。Logicの悲惨な家庭環境への理解を深めるために最適なトラックかもしれない。

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④Young Jesus

2ndアルバムに収録されたシングル曲。やっぱりこれがカッコイイ。James Blake Feat.RZAの"Take a Fall For Me"がサンプリングされている。『Take 'em back to the 90s』というリリックがイントロではっきりと聞き取れます。

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参考サイト

 http://www.complex.com/

http://genius.com/